こんにちは、m_yossieです。このブログでは、独学で医学部再受験を頑張っている方に役立つ情報を発信していきます。
香川大学編入試験の解説と対策をお願いします。
本記事では、香川大学編入試験(生命科学)の過去問解説を行います。
私は医者の家系に生まれた訳ではなく、母子家庭育ち、母は高卒です。高校生の頃から医学部に憧れていましたが、2浪しても合格できず、基礎研究の道に進み、医師の夢からは遠ざかっていました。
しかし、30を前に一念発起して医学部再受験の勉強を始め、独学で国立大学医学部の編入試験に合格しました。現在、内科医として日々臨床を行っています。
また、医学部専門予備校で講師として10年間の指導経験があり、多数の生徒を合格に導いてきました。編入学試験受験者の指導経験もあります。
過去問が入手しやすい大学からの解説になりますが、他大学の編入試験対策をする上でも参考になる部分はありますので、お付き合いください!
解答・解説は、記事のいちばん下にあります。
2022年度 自然科学総合問題 問題3
問題のダウンロードはこちらからお願いします↓
新型コロナウイルスを題材とした問題ですが、内容としては、感染症学(ウイルス学)、分子生物学、免疫学、生理学、発生学と幅広い知識が要求されます。
講評
問1
ウイルスの分類に関する出題です。新型コロナウイルス感染症の拡大で、ウイルスが広く話題に取り上げられるようになりました。DNAウイルス、RNAウイルスの基礎的な事柄については確認しておきましょう。
(1)
(+)鎖、(ー)鎖の意味を知っているかどうかを問う知識問題です。
(2)
1本鎖RNAをゲノムとして持つコロナウイルスが、どのようにして遺伝情報を複製するかを問う問題です。レトロウイルスに関しても入試では出題しやすいので、対比させて理解しておきたいところです。
問2
用語説明を中心に、免疫学に関する基礎的な内容から細胞内シグナル伝達、細胞の構造と機能に関することまで問われています。
(1)
ウイルスが感染する足がかりとなる受容体についての説明問題であり、確実に得点したいところです。
(2)
本問も中和抗体の説明のみですので、定義を確認しておきましょう。
(3)
獲得免疫の成立について、指定用語を用いて記述する問題です。これも確実に得点しておきたいところです。
(4)
ノルアドレナリンに関連して、生理学、分子生物学の基礎にまで踏み込んだ出題です。
(ⅰ)
シナプス伝達に関する記述問題であり、大学受験レベルでも頻出のテーマです。ポイントをおさえて確実に得点できるようにしておきましょう。
(ⅱ)
ホスホリパーゼCに関連した細胞内シグナル伝達の問題は、他大学の編入試験でも取り上げられています。この機会に確認しておきましょう。
(ⅲ)
考察問題です。交感神経が優位に働いている時はどういう状態か、その場合、免疫担当細胞がリンパ球に止まるとどういうメリットがあるのかを考え、解答を作成します。
(5)
形質細胞とは、抗体を産生する細胞であることを考えると、発達している細胞小器官は容易に想像できます。高校生物の知識で解答が可能です。
(6)
図1が非公表のため割愛します。
(7)
なかなか答えにくい問題です。複製時の変異率は同程度ということですが、全ゲノムに均等に変異が生じるわけではないことに着目すると解答が見えてきます。
問3
(1)
mRNAの構造に関して説明する基本的な問題です。
(2)
塩基の構造を普段からよく見ていないと、文章ではなかなか説明しづらい問題です。
(3)
本問も難しいです。RNAの材料として同じUTPを用いますが、合成の場がポイントです。
問4
(1)
リン酸エステルに結合しているのがコリンであることに気づけば、解答は容易です。
(2)
(3)の問題文もヒントになります。環構造にヒドロキシ基が結合しています。
(3)
ステロイドホルモンが遺伝子発現の調節に関わることを高校生物でも学習しますが、分子レベルでどのようなことが起こっているかを問う問題です。分子生物学の教科書を用いて、遺伝子の転写・翻訳の分子機構についてはよく理解しておく必要があります。
問5
(1)
よくある核酸に関連した計算問題なのですが、ヌクレオチドの平均分子量、アボガドロ定数などが与えられていません。知っていることを前提としているのでしょうか…。
(2)
(ⅰ)
発生学からの出題です。高校生物でも脊椎動物の発生について学習しますが、「原始線条」という用語にはなじみがないと思います。
(ⅱ)
筋収縮の分子機構について記述させる問題は大学入試でも頻出ですが、本問では筋弛緩のメカニズムを答えさせるという点で、変化球ではあります。しかも、「トロポミオシン」の語を用いて、とのことですが、解答作成の上で使いにくいです。
試験対策にオススメの教材
高校生物の学習については、『科目別勉強法〜生物(生命科学)』を参照してください。
香川大学の場合、生命科学に関して幅広く出題されており、考察問題もなかなか骨が折れます。生理学、セントラルドグマや細胞内シグナル伝達など、分子生物学の基本的なことはよく理解しておく必要がありそうです。
「細胞の分子生物学」のような分厚い教科書を進められることがあります。確かによい教科書であるとは思いますが、生物系の学部に進んだ人が大学院入試の勉強をする際に参考書として使用するような本です。したがって、学資編入試験対策には不向きです(はりきって通読してみたところで、内容はすぐに忘れてしまうでしょう)。
分子生物学の基礎を分かりやすく学びたい人には、こちらをオススメします!
分子生物学講義中継〈Part0(上巻)〉細胞生物学と生化学の基礎から生物が成り立つしくみを知ろう
分子生物学講義中継〈Part0 下巻〉代謝と遺伝学の基礎を知り、生命を維持するしくみを学ぼう
分子生物学講義中継〈Part2〉細胞の増殖とシグナル伝達の細胞生物学を学ぼう
本書の特徴は、
- イラストが豊富でに理解しやすい
- 口語調で書かれており、頭に入りやすい
- 分冊になっており、自分の苦手な分野に絞って勉強できる
です。出版から時間が経っていますが、分子生物学や細胞内シグナル伝達の基礎を固めるには十分な内容であり、依然として名著です。
まとめ
香川大学の2022年度医学部編入試験、自然科学総合問題の問題3を解説しました。
香川大学のように基本的な知識を幅広く問われる場合、早めの対策が必要です。オススメ教材も参照しながら、基礎を固めましょう!
解答・解説
最後に、解答・解説です。
参考文献にあたりながら、時間をかけて丁寧に作成しました。解答作成上のポイントも記載してあります。
無断転載を防ぐため、有料コンテンツとします。
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