虫歯が脳卒中・認知症を引き起こす!

健康を医学する

 こんにちは、m_yossieです。

 独学で医学部再受験を頑張っている人を応援するブログとして『医師への道』を立ち上げました。医師という職業は体力を要求されますので、自分の健康に対する配慮も大事になってきます。「健康とは何なのか?」という問いは、医師だけでなく、誰にとっても重要です。

 健康に関する様々な医学トピックを、一般の人にもできるだけ分かりやすく解説します。

 私は医者の家系に生まれた訳ではなく、母子家庭育ち、母は高卒です。高校生の頃から医学部に憧れていましたが、2浪しても合格できず、基礎研究の道に進み、医師の夢からは遠ざかっていました。

 しかし、30を前に一念発起して医学部再受験の勉強を始め、独学で国立大学医学部の編入試験に合格しました。現在、内科医として日々臨床を行っています。

 また、医学部専門予備校で講師として10年間の指導経験があり、多数の生徒を合格に導いてきました。編入学試験受験者の指導経験もあります。

 これから高齢化社会を迎えるにあたり、脳卒中で介護量が増えたり寝たきりになったり、あるいは認知機能が低下して家族や周囲を困らせたり警察沙汰になったりといった事態は、今以上に増えてくるのは間違いありません。

 もし、少しでも脳卒中や認知症を発症する人を減らせる方法があるのであれば、これ以上医療費を増やさないためにもぜひ実践したいところです。

 近年、虫歯と脳卒中・認知症の危険因子であることが明らかにされつつあります。本記事では、大規模前向き研究に関連する文献をもとに、虫歯と脳卒中・認知症との関係について解説します。

ミュータンス菌とは?

歯周組織は脆弱

 口腔(口の中)は消化管・気道への入り口であり、外部から入ってくる異物に対して、消化管と共通の免疫機構(異物を排除するシステム)を持っています。

 ところが、消化管に比べて歯周組織では上皮(表面の組織)が非常に弱く、口腔内に棲みついている細菌(常在菌)が侵入しやすいことがわかっています。

 したがって、口腔内のケアを行わず歯周環境が悪化したり、抜歯などの歯科処置を受けたりすることで容易に細菌が血液中に侵入し、「菌血症」と呼ばれる状態を引き起こします。

ミュータンス菌

 口腔内と頸動脈のプラーク(血管の内側に脂質などが蓄積したもの)に含まれる細菌由来のDNAを調べてみたところ、全例でミュータンス菌Streptococcus mutantsが検出されたという報告があります。

 ミュータンス菌は、幼児期に食物の口移しなどで唾液を通じて親から子に伝播することが知られています。幼児期から思春期にかけて齲歯(うし:虫歯)の発生に関わり、成人期以降には、デンタルプラーク(歯の表面の堆積物)中に常在菌として定着します。

 ミュータンス菌は酸素が豊富な血液中でも増殖することができるため、心臓の弁にくっついて増殖し、感染性心内膜炎という病気を引き起こすこともあります。

 2004年には、ミュータンス菌が人の細胞の外側にくっつくタンパク質(コラーゲン結合タンパク質:Cnm)を合成するための遺伝子を持っていることが明らかにされています(cnm陽性ミュータンス菌)。また、健康な人の中にも、口腔内にcnm陽性ミュータンス菌がいることがわかりました。

 動物実験では、cnm陽性ミュータンス菌が障害された血管内皮から血管外に浸潤して血管の周囲にあるコラーゲン線維に結合することが確認されています。

ミュータンス菌と脳出血・認知症の関係

 日本で実施された複数の疫学研究によると、口腔内にcnm陽性ミュータンス菌を持つ人では持たない人に比べて脳の微小出血の検出率が有意に高く、認知機能低下もみられました。その後の研究で、ミュータンス菌が検出される患者において、cnm遺伝子が陽性であることが脳出血、破裂脳動脈瘤を含む全ての症候性脳卒中と関連していることが明らかにされました。

 現在、日本ではRAMESSES(Risk Assessment of cnM-positivE S. mutans in StrokE Survivors)研究が行われており、特に出血リスクが高い患者でcnm陽性ミュータンス菌の有無を確認し、脳卒中発症率、認知機能低下の有無などのデータを集積中とのことです。

口腔ケアで脳卒中・認知症を予防しましょう!

 脳卒中も認知症も、なってしまったら元通りに回復することは現在の医学では期待しづらく、やはり若いうちから予防に努めるべきです

 毎年健康診断が行われ、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症への関心は昔に比べて高まっていると思いますが、歯に関してはどうでしょうか?

 日々の診療で、脳卒中や肺炎で入院してくる患者さんを目にしますが、お世辞にも口腔内ケアが行き届いていると言えない方も多くいます。ちなみに、口腔内ケアは誤嚥性肺炎の予防にもつながります。

 日常的に口の中の衛生状態に気をつけるだけで、多くの病気を防げる可能性があることがわかっているのですから、やらない手はないでしょう!

定期的に歯科を受診する

 歯が痛くない人でも、まず、定期的に歯科でチェックを受けましょう。

 「歯医者なんて行きたくない」と思うかもしれませんが、毎日歯磨きをしていても、どうしても歯垢・歯石がついてしまい、ミュータンス菌のすみかとなってしまいます。

 私も半年毎に歯科でクリーニングを受けるようにしており、10年以上、虫歯や歯周病になることなくきています。

 しばらく歯医者に行ってないという人は、この機会に歯科受診をお勧めします!

歯ブラシはヘッドの小さいものを選ぶ

 歯ブラシにも色々なものがありますが、

  • ヘッドが小さいものにする
  • 標準〜やわらかめを選ぶ

の2点が重要です。ヘッドが大きいものだと、奥歯の磨き残しがどうしても出てしまい、無理に入れようとすると嘔吐反射が出てしまいます。また、硬いものは歯茎を傷つけてしまい、細菌が侵入して菌血症になる可能性はゼロではありません。

 私からのオススメは、ピセラです。知り合いの歯科の先生に勧められて使っていますが、使い始めると、他の歯ブラシでは磨きにくくなり、リピートしています。Amazonレビューでも4.5の高評価です。

歯磨き後にはフッ素コートをしましょう

 歯磨きの後に、もうひと手間かけてフッ素コーティングまで行っておくと、さらに虫歯・歯周病の予防になります。

 オススメは、コンクールです。こちらも歯科の先生に聞いて使い始めました。歯磨きジェルとしても使えますが、私は通常の歯磨き粉で磨いた後、仕上げとして歯全体になじませるように歯ブラシでつけています。変な味もしないので、いったん習慣化すると長く続けられます!


まとめ

 虫歯の原因菌であるミュータンス菌が、脳卒中や認知症の原因の1つであるということでした。

普段の生活で口の中の衛生状態に気を配るだけで将来の重大な病気のリスクを下げられるのであれば、ぜひ実践したいところですね。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今後も健康を考える上で役に立つ記事を発信していきます!

参考文献・サイト

  1. 猪原匡史ら 齲歯・歯周病と脳卒中・認知症の関連(RAMESSES研究)神経治療37:379-384, 2020
  2. 虫歯・歯周病と脳卒中・認知症との関連を検証する世界初の多施設共同前向き観察研究の開始:RAMESSES研究 国立循環器病センター

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