梅毒は昔の病気ではない!

健康を医学する

 こんにちは、m_yossieです。

 独学で医学部再受験を頑張っている人を応援するブログとして『医師への道』を立ち上げました。医師という職業は体力を要求されますので、自分の健康に対する配慮も大事になってきます。「健康とは何なのか?」という問いは、医師だけでなく、誰にとっても重要です。

 健康に関する様々な医学トピックを、一般の人にもできるだけ分かりやすく解説します。

 私は医者の家系に生まれた訳ではなく、母子家庭育ち、母は高卒です。高校生の頃から医学部に憧れていましたが、2浪しても合格できず、基礎研究の道に進み、医師の夢からは遠ざかっていました。

 しかし、30を前に一念発起して医学部再受験の勉強を始め、独学で国立大学医学部の編入試験に合格しました。現在、内科医として日々臨床を行っています。

 また、医学部専門予備校で講師として10年間の指導経験があり、多数の生徒を合格に導いてきました。編入学試験受験者の指導経験もあります。

 今回も感染症のお話です。健康を考える上で、感染症の予防は重要です。

 本記事では、特に若い人たちの間で感染者数が増えている「梅毒」について解説します。

  • 梅毒とはどういう病気なのか?
  • 梅毒の感染者数を減らすには、どうすればよいのか?

を中心に、最新の医療記事を元に解説します。

梅毒とはどのような病気か?

梅毒の原因と症状

 梅毒とは、梅毒トレポネーマTreponema pallidumによる感染症のことを言います。
典型的には、

  • 第1期:硬性下疳(こうせいげかん:皮膚のただれを伴うしこり、性器に生じることが多い)
  • 第2期:発疹(全身の薄い発赤(バラ疹)、手のひらや足裏の発赤(梅毒性乾癬)痛み・かゆみなどはなし)
  • 第3期:全身に弾力のある腫瘍(ゴム腫)、しこり(結節性梅毒疹)、皮膚潰瘍
  • 第4期:大動脈瘤・大動脈炎(心血管梅毒)、歩行障害(脊髄癆:せきずいろう)、認知機能障害(神経梅毒)

のように経過します。感染が拡大している原因の1つは、無症候期(症状や診察上の異常はないが感染力がある)が存在することです

梅毒感染者数が過去最多!

 国立感染症研究所によると、報告された梅毒の年間感染者数は、2022年10月の集計時点で1万人を超えていました。これは、1999年に5類感染症として全数把握が義務付けられて以来、最多の感染者数です。

 男性では、幅広い年代に感染者が分布していますが、女性では20歳代での感染者数が目立って多くなっています。異性間での性交渉による感染が増加傾向と言われていますが、男性間性交渉者の間でも流行がみられています。

梅毒の治療

 梅毒の治療はペニシリン系の抗生物質で行われます。かつて日本では、世界的な標準治療薬である筋注ペニシリン系抗菌薬であるベンジルペニシリンベンザチン(BPB)が未承認であったため、経口ペニシリン系抗菌薬であるアモキシシリンでの治療がなされていました。しかし、2021年9月に、BPBが日本でも承認され、筋注での治療が可能となりました。

梅毒の感染拡大を防ぐには?

 まず、「梅毒は昔の病気である」という誤った考えを正すことが必要です。現在も性感染症として拡大していることをよく認識し、感染リスクが高い行為は避けなければなりません!

 もし、自分が感染したかもしれないと思ったら、できるだけ早く血液検査を受け、早期に治療を開始することが大事です。神経梅毒にまで至った患者さんを何人か見たことがありますが、抗生物質による治療を行ったとしても精神症状は治らず、若くして精神病院で過ごすという状況は辛すぎます…。


まとめ

 日本での梅毒の現状と対策について解説しました。性感染症の中には、健康だった人の体に大きな爪痕を残すものも少なくありません。

 性感染症に関する知識を増やすには、こちらの本がおすすめです。

これだけは知っておきたい「性病」の症状と予防法』 セルバ出版

参考文献

  1. 石金正裕 感染症今昔物語 第7回 感染拡大が止まらない梅毒  日本医事新報 5153:25, 2023.
  2. https://www.niid.go.jp/niid/ja/syphilis-m-3/syphilis-idwrc/11612-idwrc-2242.html

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